「無理」
「お受験もう無理」
「もうやめよう」
そう言いかけていた。
ジャックの模試で昭和女子大に来ている。
最近、勉強も教室もイヤイヤが噴出している娘。
入室で泣いたり、母子分離、父子分離ができないことが続いている。
そのことがあり、嫌な予感はしていた。
それでもなんとかなるかもと安易に考え、模試会場に到着。
受付で渡されたゼッケンを着けようとすると、娘は「ヤダ」とゼッケンを放り投げた。
「ちょ、待てよ」(キムタク風ではない)
それでもゼッケンを強引につけようとする母親から娘は逃げて、パパの後ろに隠れる。
我々はなんとか参加してもらおうと、娘と交渉する。
しかし、泣いて拒否するだけ。話はなにも聞いてくれない。
こうなってしまうと、落ち着くまでにしばらく時間がかかることを知っている。
深いため息をし、遠くを見る。
「今日の参加は無理かもしれないな」
入口で泣いている女児。それを取り囲む親。
我々の前を通り過ぎるキッズたちは100%自分で歩いて、きりっとした表情で中に入っている。
そんな中、我が娘は入口で1時間と15分も拒否権を発動。
ジャックのスタッフの方も気にかけて見に来てくれる。
「大丈夫ですか?」
しかし、模試では先生が子を連れて行くことはない。
もちろんそうだ。本番で誰かが手をつないで中に連れていってくれることはない。
参加予定の11時の枠の試験はもう始まってしまった。
間に合わなかった。
「午後の枠があるので、どこかで参加できそうなら、入ってください。」
というご厚意をいただいた。
「なんとか次の枠に入れてもらおう」
でも何を言っても泣いて行かない娘。
入試を受けられるのは、自分の足でひとりで進んで行ける用意ができている者だけだ。
娘にはその資格がないのだ。
その現実を突きつけられて、もうメンタルが限界だった。
泣いている娘をチラ見しながら80人は通過して行っただろう。
3人ほど知り合いにも遭遇した。
「あらあら、泣いているのね、大変ですね」
と思われただろう。
我々は引きつった作り笑顔で、声は発さずに会釈をする。
みなさん空気を読み、あえて声はかけてこない。
ママはがっかりと恥ずかしさで泣いていた。
ずっとパパの背中に隠れる娘は何を言っても泣いて
「ヤダ行かない」
だけを繰り返す。
口から「もう帰ろう」と何回もでそうだった。
しかしそのたびに、ここで撤退したらもうお受験は参加する前に終わってしまうのではないかと考え、なんとか娘が自分から行ってくれるような、声掛けはできないだろうかと思案した。
決して怒ってはいけない。
我が家は怒らない方針で受験に取り組んでいる。
基本はお願いをしている。
今日は懇願である。
ここはなんとかパパの顔に免じて、参加してくれないだろうかと。
エアコンの冷風が届かない校舎の廊下の奥で、どんよりしている父、母、娘。
ママには怒りの感情はなく、諦めのオーラがでていた。
諦めたら試合終了なのは知っているが、これ以上引き延ばすことはできない。
参加できる枠がもうなくなってしまう。
ー90分後
娘は気持ちが落ち着いたのか「この後にプールに行くなら参加できるかもしれない」
とボソッとつぶやいた。
プールでも、焼き肉きんぐでも、USJでもどこでも連れて行くよ。参加してくれるならなんでも言ってくれというメンタルになっていた。
「よし、じゃあこの後はプールに行こう。」
と食い気味に娘に伝えた。
すると、娘は覚悟を決めて、自分からゼッケンを着け、歩いて中に入って行った。
こちらは90分間、35℃の気温の中、立っていたのでげっそり疲れ切っていた。
娘が参加してくてたらもうそれで今日はよし!となっていた。結果は二の次。
その後に、実施された親子模擬面接に集中するエネルギーはすっかり残っておらず、さんざんな評価だった。
それでも娘が自分から参加したことは大きな進歩であり、お受験撤退をぎりぎり回避したのである。
追記
模擬試験の結果が今日届いた。
知ってましたよ。結果は良くないってことをね。
でも、思っていたよりも5倍くらいひどい点数で「こりゃだめだねママ」とママは仕事でいないのに、部屋で独り言をいってしまった。
これよりも低い点はありませんよってくらいの点数である。
825人中820位
どんなにポジティブシンキングでも、さすがにこれでは「合格するかも」「最後まで分からんぞ」と思い込むことができない・・・
さあどうなる
考査本番まで残り 28日